みなさんはこれまで硬い椅子に何時間も座って痛い思いをした事はありますか?
または長距離を運転し、目的地に着く頃には、お尻がしびれてしまい、動けなかった!そんな経験は?
「座る」という行為は「安楽」なイメージですが、座る椅子や座面によっては、体にダメージが生じることがあります。
何が起こっているのか?
私たちが固く平らな座面に長時間座っていると痛みを感じるのは、臀部の骨の突出部に圧力がかかるからです。最もよく知られている骨は「座骨」、もしくは医学的用語で座骨結節ともいわれる骨です。
これらの骨を保護しなかった場合、座面と骨の間にある皮膚や軟部組織にかかる圧力が高まります。そのことにより皮膚や組織は血液、酸素、栄養の供給が上手くいかなくなったり(虚血性障害)、または細胞が変形したりして、皮膚や軟部組織が傷ついてしまうことがあります。これが床ずれ(褥瘡)の原因の一つとなります。
私たちは長時間座っている時、お尻に痛みや麻痺しびれを感じ始めると座りなおしたり前後左右に動いたりして不快感や痛みを和らげようとしています。それは意識的に動くこともあれば無意識で動いていることもあります。
車椅子に乗っている人はどうでしょうか?この不快感を和らげるために思った通りに動くことができるでしょうか?もしくはそのための感覚が残っているでしょうか?
皮膚を守るため圧力を分散させることができるクッションを処方することは大変重要ですが、実際にクッションが果たしている役割をどのくらい知っているでしょうか?一人一人に最適なクッションを選ぶために、構造や理論に基づいたシーティングの効果を理解するということが非常に意味を持ってきます。例として、もし皮膚保護のためのクッションを探しているなら、接触面積の大きくなるクッションを探すべきだ、というようなことです。
接触面積を増やすこと
まずこれを理解するために、物理の授業を思い出してみましょう。座骨結節の上に座っているときにかかる圧力を最小限にしたいのです。圧力=力/面積で表すことができます。圧力を完全になくすことは不可能ですが、広い面積があることで圧力の大きさを少なくすることは可能です。小さな面積では圧力が集中し大きくなってしまう危険性があるため、我々が考えなければならないのは大きな面積に圧力を分散させることでしょう。
圧力:高い | 圧力:低い |
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力を小さい面積にかけると、 骨の突出部に高い圧力がかかります。 |
同じ力を広い面積にかけると、 かかる圧力の大きさは低くなります。 |
皮膚に対するクッションの接触面積を大きくする方法は2つあります。1つは沈み込み(immersion),2つめは包み込み(envelopment)です。